manaou's note

後で読みたいと思うメモをノートに

自信の無さとよい仕事

みなさん、こんにちは。

 

先日、役員の1人との会話で、社長をサポートする部門で仕事をしていた頃に感じたことを思い出しました。社長のサポートと言っても、付きっきりでサポートするのではなく、幾つかのプロジェクトに参加する形です。断片的にではありますが、社長と触れ合うこともあり、いろんな発言だったり、指示だったりを伺う機会があり、それはそれで私の栄養になったよい仕事だったわけであります。

 

一方で、そこを通じて感じたことなのですが、自分に自信のある社長ほど成果が上がっていないように思います。というのも、ご自身に自信がありますので、部下からの報告に対し、時にはダメ出しもしながら厳しく指導していきます。社長の見えている世界よりも、そのプロジェクトに入っているメンバーの方が最前線にいますので実態をわかっているにも関わらずです。自信があればあるほど、微に入り細に入り、興が乗ってくれば、熱も入り、どんどんエスカレートしていきます。プロジェクトを成功させる、ビジネスを上手くいかせる、会社を成長させるための親心として、部下への指導の一環としてお話ししていることは間違いないとは思います。ただ、これが進めば進むほど、自分の考え方や価値観を押し付けることになっています。

 

このような様子は、大相撲で言えば、「稽古をつける」型の指導で、下位の力士は横綱の胸をかり、ぶつかっていく。投げられて、「ありがとうございます」となる訳ですが、そこは大相撲という競技の中の世界観です。土俵で力士がぶつかり、土俵の外に出すスポーツの中での技能伝承の営みです。一方で、ビジネスはそんなに簡単なものではありません。人と組織と感情と利益がぶつかり合う複雑形ですので、社長の言う通りに事を運んでうまくいくのであれば、何の苦労はありません。

 

実際には、その指示が間違っていることもあるでしょう。ですが、部下のみなさんは社長の指示に従っていれば、一番偉い人の言う通りにやっているのだから、上手くいかなくても、社長の言う通りにやったのだから、仕方ないよね、と言い訳が入ります。さらに、指示はあくまで指示で、実行局面では色々と予期せぬことも起こるわけで、その際に、「社長、どうお考えですか?」ということでは間違っている答えを聞きにいくようなものです。感情や情報が渦巻く最前線で、総合的に考え、瞬時に判断していく社員が増えることが実行力を高め、難しい局面を打開していくには大切です。

 

少し話はそれるのですが、自分自身の仕事を振り返ってみても、自信のない活動に突っ込まれた際の方が実はパフォーマンスが良かったことも思い出しました。不安だから情報収集を念入りに、チームの力を使おうとコミュニケーションをよくし、失敗しても仕方ないと開き直った結果、よいパフォーマンスを出せたのだと思います。一方で、これは詳しいから、こうすればいいはず、と突っ込んでいった仕事は詰めが甘かったり、予期せぬ伏兵に足元を掬われた事もありました。

 

ということで、話を戻しまして、自信と仕事のパフォーマンスの関係についてです。社長だから常に正しいことを言っているわけでもないわけですので、自信のある社長が稽古をつければ付けるほど、パフォーマンスは逆回転していくわけです。「よかれ」と思ってしていることが、個々の社員が自分たちで考えなくなる方向に向かわせ、組織全体のパフォーマンスを下げている。そんな可能性もあるのだと言うことを、自分に自信のある方々ほど思いつくこともできないわけであります。哲学的ではありますが、無能な上司の元で、有能な部下が育つのも同じような理屈なのかもしれませんね。