manaou's note

後で読みたいと思うメモをノートに

役職なのか人なのか

みなさん、こんにちは。

 

若い頃、技術部門に所属していた頃の話です。開発部門から異動してきた方が上司となりました。この方が見事な感じで、暖簾に腕押し、ぬかに釘。正確に言うと、私からはそう見えていたということですね。何か相談に行っても反応なし、良いとも悪いともハテナな感じで毒にも薬にもならない存在感の無い感じでした。金だけは予算以上は使わないでと言うだけで、何をやっても何も言われないので、自分で考えたことを考えたように活動していました。ですので、自立を促すという意味では、よい上司だったのかもしれません。

 

さて、この会社に来てからの話に移りまして、着任後、さほど時間が経っていない時のことです。私は社長や他の役員の意向を伺ったり、議論をしたりするわけですが、周りを見てみると、他の方はそうではありません。プロパーの影響力のある幹部社員の意向はとても気にしているものの、職制上の上司であろう社長や役員は結構な感じでスルーします。その幹部社員がそうですね、と言えば、そうなりますし、違うんじゃないかと言えば、違うでしょ、となります。

 

うーん、何だろこれと思ったわけですが、冒頭の話と重ねて考えると、職制上の上司であろうがポンコツだと捉えていて、プロパーの幹部社員の方を向いてしまっているわけです。確かに、外部から来た社長/役員は何年かするといなくなります。そちらを向いてヘコヘコした後に、彼らがいなくなったとしても守ってくれる人はいないわけであります。

 

もう少し偏った社員になれば、そのプロパー社員のために仕事をしていたわけでして、社長だろうが役員だろうが、優先度はその次という扱いになります。忠誠心のレベルが違いますね。大企業で育ってきた私としては、うわー、こういうことが起こりえるのかと、大いに驚き、この状況に苦戦していたわけですが、冒頭の話を思い返すと、企業が大きかろうが小さかろうが、程度の大きい小さいはあれど、似たような現象は起こっているということでしょうか。

 

冷静に考えてみると、この社長よりも影響力の大きな社員がいる状況は、会社組織の運営上、色々なところに歪みが出てきてしまいます。指示命令系統が機能していないわけですから、社長が右に行こうと指示しても、左を向いてしまうかもしれません。会社の統制機構は上位から下位に指示命令が落ちて、目標達成に向けて動くはず。でも、そのプロパー社員を通らないと指示命令が行き渡らない。その彼がソッポ向いてしまうと、色々なことが成り立たない。会社経営において、大きなリスクを抱えていたわけです。

 

特異な状況のように感じるかもしれませんが、大手企業が買収したベンチャー企業やファンドに資本参加された企業のように資本の論理で傘下に収まった会社であったり、設立後、十数年が過ぎ、厳しい環境の中で放置されて自立していった会社では容易に起こり得るように思います。役職や機構で統制しているわけではなく、生き残るために中核となった人物に統制されているわけですから、介入することも難しい。無理に割り込んだとしても、その彼を中心としたコミュニティから弾かれるだけだったりします。そっぽ向かれるというわけです。

 

上司と部下の関係、役職や機構だけで組織を率いて成果を出していくことは難しい。ですので、人と人との関係性を構築していくことから始めることが大切なことは今回の話からも明らかです。ですが、人間ですから、社長だ、役員だとなると、どうしても職位というものを信じて統制していこうとするわけですが、それは悪手で、結局は人物としてそれなりに受け入れられている状態を作らないと真の反応は何も起きないということなのでしょう。また、このような会社に統治をもたらすのは真に実力のある経営者でなければ、もっと言うと、実力のある経営者であっても難しいことのように感じます。