manaou's note

後で読みたいと思うメモをノートに

資本市場と従業員

みなさん、こんにちは。

 

先日来、取締役などの会社役員となると、社員からの声が届きにくくなる話をしました。目をお客様に移しても、程度は違えど同じようなことが言えるかもしれません。そうした際に忌憚なく意見を言ってくれる唯一のステークホルダーは株主になります。「資本市場の声を聞き、資本市場の期待する成長を遂げなければならない」と、上場企業の社長の皆さんが、会社幹部や従業員に向かって話している様子が目に浮かびます。

 

確かに資本市場からすれば(自分たちのお金を株に投じている方々からすれば)、それが真実なのでしょう。株価でも配当でも構いませんので、高い利益を還元してくれれば文句はありません。ということで、日頃、苦言にさらされる機会のない社長がIRツアーで投資家を回った際に、特に業績が芳しくない際には投資家のみなさんの怒りであったり、不満であったりがダイレクトに注ぎ込まれます。一方で、投資家のみなさんは会社運営には責任がないわけですから、求めるだけ求めて、あとは経営者任せとなります。会話をする経営者の事業戦略やビジネスモデル・ビジネスプランの実際を評価することはできません。組織の実行力なんて外から見てもわかるわけがありません。経営陣を信頼できるかどうかで、会社の株を持ち続けるかどうかを決定していきます。

 

株価も経営者の成績表の一つでありますので、どれほどタフな心の持ち主でも、投資家の声はとても気になります。であるが故に、投資家の声をまとめたレポートを取締役以下の会社幹部に共有し、我々は資本市場の期待に答えねばならぬ、となってしまいます。ですが、副社長以下の皆さんは必ず上司がいます。副社長は幸福なので、社長も資本市場も気にしないかもしれませんが笑、それ以下の取締役や事業部長の皆さんは資本市場よりも上司や社長が何を言っているのかに従うわけです。

 

社長が「資本市場の声を」と言ったところで、いやいや上司がどうして欲しいかを指示して欲しいとなるでしょう。そして、その指示を実行しているのだから評価してほしい、昇格させて欲しい。そして、最後の目的地の社長になった瞬間から、これまで向いたことのない方向を向いて会社の舵取りをしていくことになります。

 

まず、こちらについては、やはりIRツアーにCFOだけを同行させるのではなく、事業責任者も晒される機会を作るべきなのでしょう。

 

さて、方向を変えまして、従業員から見た際に、この光景はどう映るのか。まぁ、とても社長が人格者で従業員の心を掴んでいるようなら、社長のために頑張りましょう、となるかもしれませんが、多くの会社ではそうではないですね。うーん、社長はそうなんだね。と思うくらいでしょう。何を言いたいかというと、一般的には資本市場との対話は従業員を惹きつけるメッセージではなかろうということです。

 

しかしながら、社長から見た景色は違います。投資家からの期待に答えなければ、最悪のケースでは辞任を求められるかもしれません。ですが、受け手である従業員にはその世界はあまりピンとこないでしょう。そして、受け手を意識しないで発されるメッセージ。やっぱり社長は難しいことをしているんだなぁ、ということで、距離が離れていってしまいがちなのかもしれません。こういうことをつらつらと考えていくと、創業のオーナー社長、ないしはその一族でない限りは、従業員の方へ適切なコミュニケーションを取っていく社長を生み出すことはなかなか難しいのかもしれません。