manaou's note

後で読みたいと思うメモをノートに

優秀さと役割分担とゆらぎ

みなさん、こんにちは。

 

会社を卒業し、他の会社に移った先輩が私が通っていたビジネス塾で講義をしたと伺いました。会社を転職して、どんなことを感じているのか、転職する前、どんなことを考えていたのか、興味があって、ずーっと、聞いてみたいなぁと思っていました。昨日、埋もれていたメールを掘り起こし、録音データにアクセスし、30分あまりでしょうか、お話を伺いました。

 

その先輩は、非常に仕事のできる方で、会社再編だったり、資本の再構成を含む企業再生だったり、その筋のプロジェクトでいろいろ成し遂げてきた大物です。ですが、いわゆる役職定年を迎え、このまま定年まで、閑職で過ごすより、第一線で働きたいという流れでの転職ということでした。私としては、転職後、大企業とは異なる組織・人材の中で悪戦苦闘している様子を聞いて、そこから学ぶところ見出したい。そんな意図で、イヤホンを装着したわけです笑

 

ですが、お話された内容は、どちらかというと、大企業にいて、こんな面白い仕事をして活躍した、こんな高い評価を受けて、自分としてはこんな業績を残した、というお話が主でした。転職後の話がほとんどないじゃん笑。あらら。

 

お題がそうだったのかもしれませんが、個人的にはあまり面白いお話ではなくて、少し残念でした。加えて少し切なく感じました。ということで、その気持ちの正体は何なのか。少し考えてみました。

 

その方は確かに資本構成の組み替えだったり、企業の再生を果たせたのだろうと思います。そこに至るまでの偉い人の説得だったり、銀行だったり、株主との交渉だったり、取締役会での協議だったり。そこにドラマがあって、面白くて、乗り越えてきたのも事実なのでしょう。ただ、嫌がる従業員に向き合って、誠意を持って説明し、矛盾の中で騙し騙しなんとかやり切ったという匂い/香りがお話からは伝わってきませんでした。白か黒かが論理的に突き詰めていけばはっきりする世界のなかで、時には交渉の妙もいるのでしょうが、なんというか、迷いが無いのです。確かに、ポジショニングとしては、監督する位置での関わりがメインなので、正しいことを正しくやりなさいと指摘し、経営に判断してもらうというポジションで、果たすべき役割を120%果したのだと思います。

 

ただ、それは本当に経営者としての実力なのかどうか、少し疑問に私は思いました。例えば、卒業した後に、その方を慕って、また一緒に仕事をしよう。という仲間ができたのかどうかというと、何となくそんな感じはしません。友達や信頼できる部下が会社にいたのかどうかでいうと、あまりいなかったようにも感じます。その方は常になにかと競っている感じでした。

 

大会社で生き抜く、自分の価値を評価されるには、専門性や仕事の成果でアピールをして、何かを成し遂げる必要があるのでしょう。そして、この方は、その戦いの中で、トップクラスでした。講義の受講生から「最終的な自分の処遇で、会社に対して思うところを教えてほしい」というよい質問がありましたが、これに対しても、非常にキレイな「悔いはない。感謝しかない。面白かった。」という答えでした。

 

感情を抑え、仮面を被って、会社から求められる領域での役割を務めきった。ただ、当然なのですが、人を率いていったり、仲間作りをし、コトを為して行く力は育まれません。それでも悔いはない、というのは、おもしろい仕事に関わってきたからということは、嘘偽りのない事実なのだと思います。ただ、逆に本当にそうだとするなら、少し揺らぎがなさすぎて、洗脳されたわけではないでしょうが、ちょっと視野が狭すぎるように感じました。大企業で、優秀で、面白い仕事があり、求められる役割を120%の力でこなし切った結果がこの人材の出来上がりだとすると、これはかなり切ない出来事だなぁと思いました。ご本人は優秀で成果を出してきたと信じているとすれば、それは尚のことです。

 

一つの役割に長くいること、閉じた世界に長くいることの切なさを感じた出来事でした。