manaou's note

後で読みたいと思うメモをノートに

よくできる子の罠

みなさん、こんにちは。

 

ずいぶんと前のことですが、マネジメント向けの研修の企画をして、外部講師を呼び、講演をしていただきました。その彼はOBの方でして、聴衆の前で話すことに慣れていないようで、もうこれまで見たことがないくらいにぐだぐだ。参加者の反応も評判も最低でして、事務局としては死ぬかと思った出来事です。

 

それはさておき、その中で取り上げていただいた「問い」で、とても印象に残っていることがあります。それは「優秀な大学を卒業して、大企業に入り、やる気に満ち溢れていた社員が会社で長く過ごしているうちに、どうしてダメになってしまうのか」です。講演が滑っていたので、事務局としては、もうダメ!という状態でして、その際にはそのことをサラリと受け流してしまったわけですが(いつもと同じですね)、このことについて、今一度、考えてみたいと思いました。

 

いくつか論点がありますが、ひとつのポイントは優秀な大学を出て、大企業に入る人達の持つ特性です。難関大学への入学には難しいテストで一定の得点を取らないといけません。当然ながらベースとなる学力はそれなりにある前提で、合格に向けたテクニックとして「ミスをしない」ことが大切です。次に「大企業に入ることを選ぶ」ことは、キャリアを形成していく上で堅実な選択肢とされていました。

 

当然ながら、ひとり一人で個々に見れば違いますが、全体の傾向としては、このような「守りに強い」考え方をする人たちが集まっていたということでしょう。さて、入社当初は皆さん、頑張ろうと思っていますが、大企業の仕事の仕方に触れていく中で、個が削りとられていくことを体感します。何を言っているかというと、役割分担で事をなすので、与えられた役割を着実にこなすことを学ぶということです。

 

「着実にこなす」ということが曲者でして、入社当時は役割>能力の関係なので、頑張って役割=能力の関係となるよう努力します。また、一定の活躍を見せることで、新たに与えられる役割>能力となり、追いつこうとさらに能力が高まっていく、これが理想ですね。ですが、ポジションには限りがあり、すべての人がこのサイクルで成長していけるわけではありません。

 

そうすると、役割=能力から役割<能力となっていき、この状態となると、もはや努力しなくても、ミスをしないという域に達してしまいます。この「楽して守っている」状態は、前述の「守りに強い」特性を持つ人たちには非常に危険です。さらに仕事の範囲や責任限定していけばいくほど、楽になっていきます。一方で、よほどのことがなければ、降格・降給はない。とすれば、「あぁ、私はこれ以上、上位には進めないのね」と思った瞬間、この退化が始まってしまいます。一度「退化」が始まってしまうと、坂を転がり落ちるように、モチベーションも失われ、言われたことだけを言われた以上には絶対にやらない、という人が出来上がってしまいます。

 

洞察はさておき、「では、どうするか」ですが、上記より導き出される結論としては、いろいろな枝葉をそぎ落としてシンプルに言うと、役割>能力の状態を作り続ける、ということになります。それは何かというと、一つはローテーションですし、新たな業務アサインだったり、日々のマネジメントの中でも十分に対応可能な営みで回避できると思います。ただ、これは「坂を転がり落ちる」前でなければ意味を成しませんので、やはり上司が注意深く観察し、居心地のよい状態を作らないことが基本になるのでしょう。